プライムス

大学院生の数学ノート

Dirichlet指標のGauss和について

Dirichlet指標のGauss和について紹介します。目標はGauss和の絶対値を求めることです。

Dirichlet指標の性質については
www.mathnote.infoで解説していますので、こちらも参照してください。

定義

qを自然数とし
\begin{align}
e_q(n)=e^{(2\pi i n)/q}
\end{align}と置きます。これは明らかに1の q乗根になっています。mod qのDirichlet指標 \chiに対しGauss和 \tau (\chi )
\begin{align}
\tau (\chi) =\sum_{n=1}^q \chi (n)e_q(n)
\end{align}と定義します。こいつが今回のメインテーマです。

後で必要になるので1の q乗根に関する補題を一つ示しておきます。

補題1

\zeta_qを1の q乗根とする。このとき
\begin{align}
\sum_{i=0}^{q-1}\zeta_q^i =
\begin{cases}
q \quad &(\zeta_q =1)\\
o \quad &(\zeta_q\neq 1)
\end{cases}
\end{align}が成り立つ。

証明 \zeta_q=1のときは明らか。\zeta_q \neq 1のときは、等比数列の和の公式をもちいれば
\begin{align}
\sum_{i=1}^{q-1}\zeta_q^i = \frac{1-\zeta_q^q}{1-\zeta} =0
\end{align}となる。 (QED)

便利な公式

次の公式は簡単に示すことができます。

補題2

\chiをmod qのDirichlet指標とする。このとき (n,q)=1となる自然数 nに対して\begin{align}
\chi (n)\tau (\bar{\chi})=\sum_{h=1}^q\bar{\chi}(h)e_q(nh)
\end{align}が成り立つ。

証明 Dirichlet指標の絶対値は1であるから \chi (n) \bar{\chi}(n)=|\chi (n)|^2=1である。したがって nのmod qでの逆元 n^{-1}をとれば \bar{\chi} (n)=\chi (n^{-1})がなりたつ。したがって
\begin{align}
\chi (n)\tau (\bar{\chi})
&=\sum_{m=1}^q\chi (n) \bar{\chi} (m)e_q(m)\notag \\
&=\sum_{m=1}^q \bar{\chi}(n^{-1}m)e_q(m) \notag
\end{align}n^{-1}m=hと置けば
\begin{align}
\quad \quad=\sum_{h=1}^q\bar{\chi}(h) e_q(nh)
\end{align}となる。(QED)

系3

任意のDirichlet指標\chiに対し
\begin{align}
\tau (\bar{\chi} )=\chi (-1) \overline{\tau (\chi )}
\end{align}が成り立つ。特に |\tau (\chi )|=|\tau (\bar{\chi})|である。

証明 補題2の公式において n=-1とすればよい。

補題2を拡張して次のガウス和に関する便利公式を示します。補題2と比べるとより複雑な議論が必要になります。

定理4

\chiをmod qの原始的Dirichlet指標とする。任意の自然数 nに対して\begin{align}
\chi (n)\tau (\bar{\chi})=\sum_{h=1}^q\bar{\chi}(h)e_q(nh) \label{GSF}
\end{align}が成り立つ。

証明(n,q)=1のときは補題2であるから (n,q)>1と仮定する。 n/qを既約分数で表示したものを n_1/q_1と表す。もし q_1=1なら nqの倍数であるから\eqref{GSF}の両辺は0になる。したがって以下 q_1>1と仮定して証明をする。このとき\eqref{GSF}の左辺は明らかに0であるから
\begin{align}
\sum_{h=1}^q\bar{\chi}(h)e_q(nh)=\sum_{h=1}^q\bar{\chi}(h)e_{q_1}(n_1h)=0 \label{thm4 claim}
\end{align}を示せば定理4が従う。以下\eqref{thm4 claim}を示す。
q=q_1q_2と置く。このとき
\begin{align}
h=uq_1+v \quad (0 \le u \le q_2-1, 1 \le v \le q_1) \notag
\end{align}と置けば h1\le h\le qを動く。このとき e_{q_1}(n_1h)=e_{q_1}(n_1v)に注意して
\begin{align}
\sum_{h=1}^q\bar{\chi}(h)e_{q_1}(n_1h)
=\sum_{u=0}^{q_2-1}\sum_{v=1}^{q_1}\bar{\chi}(uq_1+v)e_{q_1}(n_1v)
\end{align}したがって\eqref{thm4 claim}は
\begin{align}
S(v)=\sum_{u=0}^{q_2-1}\bar{\chi}(uq_1+v) =0 \quad (\forall v) \label{thm4 claim2}
\end{align}に帰着される。S(v)q_1だけシフトすると
\begin{align}
S(v+q_1)&=\sum_{u=1}^{q_2}\bar{\chi}(uq_1+v) \notag \\
&=\sum_{u=1}^{q_2-1}\bar{\chi}(uq_1+v)+\chi(v) \notag\\
& =S(v) \notag
\end{align}となるので S(v)は周期 q_1を持つことがわかる。ここで c\equiv 1 \; (q_1)となる cをとると \chi (c)\neq 0であり、ある自然数 kに対して c=1+kq_1と書けるので S(v)の周期性より
\begin{align}
\bar{\chi}(c)S(v) =\sum_{u=0}^{q_2-1}\bar{\chi}((cu+kv)q_1+v)=S(v) \quad (\forall v)
\end{align}が成り立つ。したがって、もし
\begin{align}
c\equiv 1 \; (q_1), \; (c,q)=1 ,\; \chi (c) \neq 1 \tag{☆}
\end{align}なる c\in \mathbb{Z}が存在すれば\eqref{thm4 claim2}が従い定理4が示される。
(☆を満たす cの存在の証明) 今 \chi は原始的であると仮定しているから
\begin{align}
(c_1,q) =(c_2,q) =1, \; c_1 \equiv c_2 \; (q_1) ,\; \chi (c_1 )\neq \chi (c_2) \notag
\end{align}となる c_1,c_2が存在する。c_2のmod qでの逆元 c_2^{-1}を取ればこれは qと互いに素であり、さらにこのc_2^{-1}c_2のmod q_1での逆元であることも容易に分かる。したがって
\begin{align}
c_1c_2^{-1}\equiv 1 \; (q_1) , \; (c_1c_2^{-1},q)=1 , \; \chi (c_1 c_2^{-1}) \neq 1 \notag
\end{align}となるから c=c_1c_2^{-1}は☆を満たすことがわかる。
以上より定理4が示された(QED)

Gauss和の絶対値

定理3を用いることで原始指標に対するGauss和の絶対値を計算することができます。

定理5

\chi をmod qの原始的Dirichlet指標とすると
\begin{align}
{|} \tau (\chi)|=\sqrt{q}
\end{align}が成り立つ。

証明 定理4より任意の nに対して
\begin{align}
{|}\chi (n)\tau (\bar{\chi} )|^2 = \sum_{h_1=1}^q\sum_{h_2=1}^q\bar{\chi}(h_1)\chi (h_2)e_q(n(h_1-h_2) ) \notag
\end{align}これを 1\le n \le qに渡って足し合わせれば
\begin{align}
\varphi (q) {|}\tau (\bar{\chi})|^2=\sum_{h_1,h_2}\bar{\chi}(h_1)\chi (h_2) \Big{(}\sum_{n=1}^q e_q(n(h_1-h_2) ) \Big{)} \notag
\end{align}最後の和は1の q乗根に渡る和であるから補題1より h_1=h_2のときのみ値を持ち qとなる。したがって
\begin{align}
\varphi (q) {|}\tau (\bar{\chi})|^2= q\sum_{h=1}^q{|}\chi (h)|^2=q\varphi (q) \notag
\end{align}が得られ、これと系3より主張が従う。(QED)

おわりに

ここに書いてある程度Gauss和について知っているとL関数の関数等式や平方剰余の相互法則が示せるみたいですね。今回はGauss和の絶対値を求めましたが、特別な場合のGauss和の符号の決定は難しい問題ですが、Gauss本人によって解決されたようです。

参考文献

以下の二つを参考にしました。
(1) Multiplicative Number Theory (Graduate Texts in Mathematics 74)

(2) 素数とゼータ関数 (共立講座 数学の輝き)